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広島高等裁判所 昭和58年(行コ)5号 判決 1985年6月21日

山口県宇部市藤山区東平原一八区

控訴人

高橋源次

右訴訟代理人弁護士

坂元洋太郎

同県同市常盤町一丁目八番地

被控訴人

宇部税務署長

田邊武司

右指定代理人

佐藤拓

青山彰彦

田中悟

高地義勝

福重光明

右当事者間の所得税更正処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、当事者双方の求めた裁判

控訴人は「原判決を取り消す。被控訴人が控訴人に対し、昭和五二年三月三一日にした昭和四九年分課税所得金額五三六万五、〇〇〇円、所得税額一〇三万四、四〇〇円とする更正処分、過少申告加算税四万七、五〇〇円とする賦課処分は、課税所得金額一九八万二、〇〇〇円、所得税額二五万二、七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税につき、これを取り消す。被控訴人が昭和五二年三月三一日控訴人に対してした昭和五〇年分課税所得金額七三三万円、所得税額一五五万二、二〇〇円とする更正処分(但し、現に効力を有する部分)、過少申告加算税七万一、九〇〇円とする賦課処分は、課税所得金額二七一万三、四二八円、所得税額三六万八、四〇〇円を超える部分及び過少申告加算税につきこれを取り消す(控訴人の控訴の趣旨は明確ではないが、右の趣旨に理解する。)。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求めた。

二、当事者双方の事実に関する主張は、次に附加、訂正、削除するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決添付の別表と本判決添付の別表の関係は次の表のとおりである(したがって、原判決に別表一とあるのを別表一の1に、別表二とあるのを別表二の1と読みかえることになる。)。

原判決における表示 本判決における表示 本判決において新たに加えたもの 本判決において内容を改めたもの 原判決の分をそのまま引用するもの

別表一 別表一の1 ○

別表一の2 ○

別表二 別表二の1 ○

別表二の2 ○

別表三 別表三 ○

別表四 別表四 ○

別表五 別表五 ○

別表六 別表六 ○

別表七 別表七 ○

別表八 別表八 ○

別表九 別表九 ○

別表一〇 別表一〇 ○

別表一一 別表一一 ○

別表一二 別表一二 ○

別表一三 別表一三 ○

2  原判決三枚目表二行目「二四九万五、六七五円」を二五二万四、四五五円」と、同六行目「八・二パーセント」から同裏一行目終りまでを「六・四パーセントを乗じた三五六万七、七四五円であるのに、いずれもこれを超えて過大な事業所得額を認定した違法」と改め、同五枚目裏一行目「別表七の<1>欄の」の次に「とおり、本件更正処分に対する異議及び審査手続中に控訴人から提出された資料等によると、その売上金は三、三七八万七、九七五円となり、」を加え、同二行目「の<2>欄」から同三行目「計算根拠欄」までを削除し、同七行目終りに続き行を変えて次のとおり加える。

「5 昭和四九年分の材料費、外注工事費、賃借料、未完成工事支出金につき争いがあるところ、被控訴人の主張は次のとおりである。

(一)  材料費 一、一七六万〇、八四九円

被控訴人主張の内訳は別表八の該当欄記載のとおりである。このうち、永和機工(発電機)、興陽商事(パイプベンダー)は被控訴人主張額のみ減価償却として昭和四九年分に計上しその余は次年分以下に計上すべきものであり、下田工務所、永和機工、栄商店、朝日産業のうち争いのある額欄記載分は、昭和四八年中に売買が成立し権利義務が確定したので、同年分に計上すべきであり、その他の争いのある額四万三、五二九円は領収書集計上の誤差である。

(二)  外注工事費 三八七万六、五〇〇円

(1) 被控訴人主張の内訳は別表九の該当欄記載のとおりである。

(2) 内田直行に対する外注は三万二、〇〇〇円(甲第二四六号証。昭和四九年一〇月一日支払)にすぎない。すなわち、

(イ) 控訴人が内田に対し外注した工事がどの工事であるか特定することができないから、控訴人主張のように多額の外注をさせたとみることはできない。

(ロ) 工事の従事人数も控訴人主張によると一日に多いときには一五、六人になり、控訴人の事業からみて疑問がある。

(ハ) 控訴人は当時毎月のように現金不足の状況で支払資金があったとはみられず、その請負形態についても、控訴人は一括請負であるとし、内田は人夫の数による労務請負で月締めの一括請求であるとしており、両者の供述に齟齬がある。

(ニ) 控訴人提出の領収証は、甲第二四六号証を除き、他はすべて昭和五二年九月八日異議決定後不服審査手続中に作成されたが、その作成にあたり根拠となるべき証拠書類が控訴人にはもとより内田にも存在しなかったもので、その内容は信用性がない。

(3) 山口クボタ一万円は修繕費に、林電気商会三、三五〇円は消耗品費に計上済であり、これを外注費に再計上することはできない。山本寿美と双葉断熱工業は同一事業主体であるところ、一月分二四万円については工事内容、施工年月日が不明で、これに関する証拠書類もない。なお、横川商事外注分として九、〇〇〇円が計上洩れである。

(三)  賃借料 一八万八、九八二円

被控訴人主張内訳は別表一〇の該当欄記載のとおりである。高橋産業についてはその証拠書類がなく、ことに一万円は材料費と重複して計上されている。

(四)  未完成工事支出金 七四八万三、〇一五円

未完成工事に含まれる工事原価費目内訳は別表一一の被控訴人主張額記載のとおりである。

3  原判決六枚目表七行目「三、三二三万七、九七五円」を「は、本件更正処分当時把握できた額が三、三二三万七、九七五円であったが、その後異議及び審査手続中に調査し確定した額が三、三七八万七、九七五円であり、これを最終的に主張し、」と改め、同表八行目「円であり、その」の次に「本件各更正処分当時判明した」を、同末行目終りに続き行を変えて次のとおり、それぞれ加える。

「4 昭和四九年分の材料費、外注工事費、賃借料、未完成工事支出金についての控訴人の主張は次のとおりである。

(一)  材料費 一、三二三万四、二六三円

その内訳は、別表八控訴人主張額のとおりであり、永和機工(発電機)、興陽商事(パイプベンダー)は減価償却の対象とならず、下田工務所、永和機工、栄商店、朝日産業についても昭和四九年分の取引である。

(二)  外注工事費 六七六万八、八五〇円

控訴人の主張内訳は別表九の該当欄記載のとおりである。被控訴人の否認する主要なものは、内田直行に対する外注工事費(人夫賃)二六八万円についてあるが、それについては帳簿(甲第二号証)及び領収証(甲第二四二、第二四六、第二五三、第二五五、第二五七、第二七三、第二七七、第二八一号証)があり、それは人夫などの「出面」を記載したノートの類をもとに発行されたものであり、証人内田直行の証言と合わせ、すでに証明されている。山口クボタ、林電気商会については帳簿(甲第二号証)のとおりであり、山本寿美については右帳簿の記載中、合計三一万円(二月八日六万円、四月二二日二五万円)が双葉断熱工業欄と重複するのでこれを差引くが、その余は山本寿美欄にすべて記載すべきところ双葉断熱工業欄を誤ってもうけ両者に分けて記載したものにすぎない。

(三)  賃借料 二五万八、一八二円

控訴人の主張内訳は、別表一〇の該当欄記載のとおりである。帳簿(甲第三号証)の合計二六万一、九七二円のうち田中酸素三、七九〇円は昭和四八年分であるので差引き、高橋産業については合計七万九、五〇〇円を支払消であるが、内一万〇、三〇〇円は仕入高の経費に計上したので、残六万九、二〇〇円が賃借料となる。

(四)  未完成工事支出金 八四〇万八、三八〇円

控訴人は昭和四九年一一月中旬ころ岡村商店からかんがい用水工事を代金一、四七〇万円、竣工期昭和五〇年一月三一日として請負い、昭和四九年中に五〇%の工事をしその支出をした。その支出内訳は別表一一のとおりである。

三、証拠関係は、本件記録中の原審及び当審における書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一、控訴人に対する本件各更正処分、過少申告加算税賦課処分、その経緯事実及び同業者比率による推計の合理性については、当裁判所も、原判決理由一、二及び三1、2(原判決七枚目表一〇行目冒頭から一五枚目表末行目終りまで)と同一に判断するので、これをここに引用する。但し、原判決一四枚目裏九行目「三、三二三万七、九七五円」の次に「(但し、本件更正処分当時判明した額であり、最終的の主張金額は三、三七八万七、九七五円である。)」を加える。

二、昭和四九年分の事業所得につき、控訴人は、別表七の控訴人主張額欄記載の実額計算によると、二五二万四、四五五円にすぎず、本件更正処分のうち右額を超える部分は違法で取消を免れない旨主張し、被控訴人は右実額計算については、別表七の被控訴人主張額欄記載のとおりでその事業所得は六〇三万四、〇五四円となり、本件更正処分の五九〇万七、二六三円より若干多い所得となるが過大または過少の金額ではないから、本件更正処分は適法である旨主張する。

1  昭和四九年分事業所得の計算基礎は、原価の材料費、外注工事費、賃借料、未完成工事支出金を除き、別表七各該当欄記載のとおりであることが当事者間に争いがない。

2  材料費(別表八)について

原審証人藤井晟男、同古田征吉(第二回。但し一部認定に反する部分を除く。)を総合すると、次の事実が認められる。

下田工務所八三万七、六八〇円(昭和四九年一月九日支払七〇万円(甲第六号証)、同年同月一〇日支払一三万七、六八〇円の合計額)は昭和四八年一一月三〇日の、永和機工二万五〇〇円(昭和四九年一月一六日支払、甲第一二号証)、栄商店二四万五、五九八円(同年同月同日支払、甲第一三号証)、朝日産業一六五円はいずれも昭和四八年分の取引で、昭和四八年分として計上すべきものである。また、減価償却費として計上すべきものに永和機工(発電機)三万五、七六〇円、興陽商事(パイプベンダー)四万二、〇〇〇円があり、(正確にいうならば右のとおり、右金額は材料費でなく減価償却費であるが、いずれにしても工事原価の一部であるので便宜上ここに計上する。)、購入額中その余の額は次年分以後に計上すべきである。その余の材料費は控訴人の自認する七八〇万二、八三〇円に止めるべきものであり、したがって、材料費の合計は別表八の認定額欄記載のとおり一、一七一万七、三二〇円となる。

右認定に反する甲第一号証中該当部分の記載、原審(第一回。但し、第二回はその一部)当審証人古田征吉の証言(またはその一部)は根拠に乏しいので信用し難く、他にこれを左右する証拠はない。

3  外注工事費(別表九)について

(一)  内田直行に対する人夫賃について

(1) まず、控訴人が昭和四九年中に内田に対し外注工事の発注をしたかどうかの点について検討する。

控訴人が少なくとも別表四のとおり各取引先から工事を請負ったことは当事者間に争いがなく、この事実と、当審証人内田直行、原審(第一、二回)及び当審証人古田征吉の各証言、原審及び当審控訴人本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

控訴人は、常時土工二人を雇用し、専ら配管を地中に埋設するための溝堀り等を行わせていたが、昭和四九年中に請負った工事の中にはボイラーの配管(亀屋産業、日新技工)、ダクト関係配管(三光工業)、冷暖房配管(栗屋商事)、汚水処理場の排水升築造、配管接続、ポンプモーターの修理(山口メンテナス)、コンクリート壁に電気コンジットを通す管を埋め込む工事(長門電気)などの配管附帯工事で技術を要し土工ではできない仕事もかなりあった。内田は右のような工事技術をもつ人夫を含め常時約一五人を雇用して土木業を営み、事務所が控訴人の事務所と同じ建物内にあったところから、控訴人は右の附帯工事を内田に下請負(労務請負を主としていた。)させたこともあり、また、山崎設備にも下請負させ(その額は二六万四、〇〇〇円)、職業安定所を通じて臨時に人夫を雇用することもあった。

以上のとおり認められ、これを左右する証拠はない。

(2) 右(1)の内田に対する外注工事費につき、控訴人は領収証(甲第二四二、第二四六、第二五三、第二五五、第二五七、第二七三、第二七七、第二八一号証)の合計額二六八万円であると主張する。

外注工事費は、他の経費と同様、納税者が適正に作成して備付した商業帳簿とその記載を証明する証拠書類で確定するのを原則とし、必要に応じ反面調査がされるところ、控訴人にその商業帳簿及び前記領収証以外の証拠書類がないことは当事者間に争いがなく、前記(1)冒頭記載の各証拠を総合すると、甲第二六四号証を除く前記各領収証は本件の異議決定(昭和五二年九月八日)後不服審査手続中に、控訴人の求めにより内田が発行したものであるが、その作成当時、内田には先に月毎に口頭請求した際の基礎となり各人夫の稼働日数を記載していたというノートが存在しなかった上、控訴人にも各領収証の金額につき根拠となる証拠書類がなかったことが認められ、右領収証(但し、甲第二四六号証を除く。)は根拠となる証拠書類に基づかないで作成されたものといわざるをえず、したがって、この領収証があるからといってこの額をもって外注工事費と確定することは困難である。控訴人が昭和四九年一〇月一日内田に対し、外注工事費三万二、〇〇〇円を支払ったこと、すなわち甲第二四六号証の領収証関係は当事者間に争いがないところ、右以外の領収証の作成根拠、作成過程及び被控訴人の調査要求に対する控訴人の態度等を総合すると、右争いなき部分以外には外注工事費は存在しないとの被控訴人主張も肯けないわけではないが、なおそのように断定するには憚かるものがある。

(3) そこで、控訴人の内田に対する外注工事費は推計により算定せざるをえないところ、同業者の売上金に対する外注工事費の比率はほぼ五・七一%(弁論の全趣旨から各成立が認められる乙第一、第二、第五、ないし第七号証の各売上金の合計額に対する外注工事費の合計額の割合)であるのに、内田分を除く同比率は被控訴人主張額によってさえすでにこれを超えた一一・三七%()に達しており、他方、控訴人が直接職業安定所等を通じて雇用した人夫の賃金は労務費(一、五三三万九、一一〇円)に含まれて計上済のものがかなりあるものと推認され、したがって、内田への外注額を控訴人主張額のように多額に推計することは相当でない。さて、前記(1)冒頭記載の証拠によると、内田は控訴人に対し月毎に一括して口頭で請求したこと、昭和四九年九月分(甲第二四六号証)は三万二、〇〇〇円であること、昭和四九年中の外注月数は七か月(甲第二五三号証と甲第二四六号証は同じ同年九月分の請求で重複する)であることが認められるところ、これまで説示した点を総合すれば、右九月分の外注金額程度が毎月あったとはいい難いが、ほぼこれに近いものがあったと一応いうことができ内田への外注工事費は全額で二〇万円であったと推計する。

なお、観点を変えて推計を試みるに、前記(1)認定の外注を要するとみられる亀屋産業、三光工業、日新技工、栗屋商事、山口メンテナス、長門電気工事の各売上(収入)額については争いがないので、その合計額四四六万一、七三八円に前記同業者の外注工事比率五・七一%を乗ずると、二五万四、七六五円となり、右外注比率の中には、人夫賃以外の費用も含まれている上、控訴人は内田だけでなく山崎設備にも下請負させていることを合わせて考えると、前記推計二〇万円は一応の合理性を有するものということができる。

(二)  前顕甲第二号証、弁論の全趣旨から各成立が認められる甲第二六〇、第二八〇、第二八二、第二九六号証、原審証人藤井晟男(但し、一部認定に反する部分を除く。)、原審(第一、二回)及び当審証人古田征吉(但し、一部認定に反する部分を除く。)の各証言、原審及び当審控訴人本人尋問の結果(但し、一部認定に反する部分を除く。)を総合すると、次の事実が認められる。

(1) 山口クボタの外注費は、本来減価償却費とするのが相当とみられるのにそれに計上していなかったものとして計三〇万五、〇〇〇円(スチールカッター)が存在するが、一万円についてはすでに修繕費に計上され重複記載となっているので、結局三五万五、〇〇〇円となる。

(2) 林電気商会は昭和四九年六月分一三万円のところ、内金三、三五〇円(甲第二九六号証)は消耗品費に計上算定ずみで重複するのでこれを差引いた一二万六、六五〇円となる。

(3) 山本寿美と双葉断熱工業とは同一事業主体であり、甲第二号証の双葉断熱工業欄は各領収証(甲第二八二、第二六〇、第二四七号証)に基づき合計五四万円と記載されているのに、なお、それが山本寿美欄にも重複記載されている(なお、山本寿美欄一月分二四万円についてはこれを認められる証拠がない。)ので合わせて五四万円ということになり、その他の四万円を加えると、山本寿美は合計五八万円となる。

(4) 横川商事の設計外注は、昭和四九年三月三万二、〇〇〇円(甲第二八〇号証)のみで、他に記載洩れはない。

(5) 外注工事費のその他は二七九万一、八五〇円(この点は当事者間に争いがない。)である。

以上のとおり認められ、一部右認定に反する原審証人藤井晟男、原審及び当審証人古田征吉の各証言の一部、原審及び当審控訴人本人尋問の結果の一部は信用し難く、他にこれを左右する証拠はない。

(三)  したがって、外注工事費は、別表九の認定額欄記載のとおり四〇三万五、五〇〇円である。

4  賃借料(別表一〇)について

原審証人古田征吉(第二回)の証言から成立が認められる甲第三号証、原審証人藤井晟男、原審(第一、二回)及び当審証人古田征吉の証言を総合すると、高橋産業株式会社に対する賃借料のうち一万円を材料費に計上ずみであり、これは賃借料に計上すべきでないことが認められ、右甲第三号証では高橋産業に対し七万九、五〇〇円の賃借料を支払った記載があるが、その証拠書類が全く存在しないからこれを認めることはできない。したがって、賃借料は当事者間に争いのない別表一〇の認定額欄記載のとおり一八万八、九八二円となる。

5  未完成工事支出金(別表一一)について

原審証人藤井晟男の証言及び弁論の全趣旨を総合すると、控訴人が昭和四九年一一月中旬ころ岡村商店から代金一、四七〇万円、竣工期昭和五〇年一月三一日として請負ったかんがい用水工事の、昭和四九年中の未完成工事支出金は、別表一一認定欄各記載のとおり、被控訴人主張額と同一であることが認められ、右認定に反する甲第四号証、原審及び当審(第一、二回)証人古田征吉の証言は信用することができず、右認定を左右する証拠はない。未完成工事の支出金も可能な限り実額により計算すべきであり、一率に五〇%とする控訴人主張の算定方法は実態と著しく異なるので相当ではない。

6  したがって、昭和四九年分事業所得は、別表七認定額欄記載のとおりとなり、収入合計七八五万五、五八八円(売上金三、三七八万七、九七五円から工事原価二、五九三万二、三八七円を差引いたもの。なお、右工事原価は、工事原価費目計三、三四一万五、四〇二円から未完成工事支出金七四八万三、〇一五円を差引いたもの)から経費合計一九三万七、〇〇五円を差引いた五九一万八、五八三円となり、右所得額は本件更正処分事業所得額五九〇万七、二六三円を超えるものであって、本件更正処分は違法でない。この点の控訴人主張は失当である。

三、控訴人は、昭和五〇年分事業所得につきその実額計算の基礎を主張していないので、白色申告者である控訴人に対しては実額計算をするに由なく、推計によらざるをえないところ、同業者比率を適用した事業所得が八一八万四、八八六円となることは前述したとおりであり(原判決引用部分)、その本件更正処分(但し、異議決定により八一八万四、八六六円を超える部分はすでに取り消されている。)は、現に効力を有する限度で適法なものというべきである。

四、以上のとおりであるから、控訴人の本訴請求は理由がなく棄却を免れないところ、これと同趣旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹村壽 裁判官 高木積夫 裁判官 池田克俊)

別表一の2 昭和49年分課税額

<省略>

別表二の2 昭和50年分課税額

<省略>

別表七

昭和49年分所得計算表

<省略>

別表八

材料費

<省略>

別表九

外注工事費

<省略>

別表十

賃借料

<省略>

別表十一

未完成工事支出金

<省略>

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